Chandler R.I.P.


時間が経過してしまったが、これだけは書き留めておかなければならない。

Raunch Handsのヴォーカル、Michael Chandlerが4月の23日に亡くなった。享年56歳。派手で目立つバンドではなかったが、日本でも一部ながら熱狂的なファンは多いはず。もうずいぶん昔の話になるが、ガレージ・パンクに開眼したばかりの自分にとって、80年代末〜90年代初頭のニューヨークのガレージ・シーンというのは最先端だった。そのシーンの一端を担うRaunch Handsが、91年の秋に早々と来日を果たすのだが、もうそれは一つの大事件といえる出来事だった。

初めて出会った際、正直ガツンとくるような衝撃はなかったが、彼らの音楽的な背景を紐解くうちに、どんどんのめり込むようになっていた。時間を要したぶん、愛着も別格となった。ここ半年くらい、彼らの音源を聴き直していたのだが、カヴァー曲セレクトのセンスの鋭さに驚嘆しまくりである。少し立場が異なるかもしないが、Detroit Cobrasが2000年前後にやっていたことを既に80年代半ばに確立させているのだ。そしてそこに収められた原曲の大半は、FRATHOPでサプライしているディスクに直結し、自らの原点の一部であることを再び認識する。

話は変わって、2008年の渡米時、ボストン・ガレージ・パンク・レジェンドDMZの再結成ライヴをニュージャージーの名物クラブMaxwellsで観る機会を得た。後で聞いた話によれば、Goriesを中心にCrypt Recordsの25周年記念イヴェントが催される予定だったらしい。それがどういう経緯を経たか知らないが、結局DMZの出演のみとなり(一応サポートはついたが、メインという意味で)、CryptのボスTim Warrenはもちろん、Mick CollinsやNew Bomb TurksのEric、BBQ/King Khan、ほかにもCryptゆかりのミュージシャン、オールスターが会場に集結し、同窓会のような賑わいをみせた。

Raunch Handsの元ドラマーでレコード・ディールの方でもお世話になっているVinceにポンと肩を叩かれ、後ろを振り向けば、おお、Chandlerではないか。約17年ぶりの再会。むこうにしてみれば当方のことなど知らないだろうが、えらくフレンドリーな態度で接してくれた。歓談のさなか「日本のでライヴは、人生に於ける重要な思い出なんだ」と、彼は強調する。一瞬お世辞か?と思ったけど、のちに入手したファンジンHuman Being Lawnmower #1のChandlerのインタヴュー記事に、同じような一文が記されていた。私もRaunch Handsをこの日本で観られたことは、音楽人生のなかでも重要な思い出。そして今あの時のにこやかな表情を思い出すと、涙が溢れてくる。


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